6時間掛けて月に二度も同じ廃墟を訪れる亡者は私以外にいるのだろうか。
このホルマリン漬けのトノサマガエルちゃんの姿をどうしてもまた見たくなってしまったのだ。
それ程有名な廃墟ではないし、平日、しかも雨の日だったので、人に会うことはまずないと思っていたが、驚くことに、校庭には車が停まっていた。
関係者でないことを祈りながら、いかつい三脚を肩に担ぎ、猟師の如く忍び足で中に入る。
一階には誰もいない。
二階から聞こえてくる足音は一人分だったので、おそらく同業者であろうと予想し、仲間の合図としてカメラのカシャカシャというシャッター音を鳴らす。
しばらくすると、警戒心を解いた同業者が、一階へ降りてきた。
手には三脚とカメラ。
「ほっ」
互いの表情に安堵の色が浮かぶ。